【今さら】えんとつ町のプペルを読んだ
かかりつけ医の待合室に、えんとつ町のプペルがあったので、読んでみたよ。
結論から言うと、予想してたより良かった。特にイラストは素晴らしい。
九龍城なのか、日本なのか、過去なのか未来なのか。異世界でありながら郷愁を誘うような、美しいイラストでした。
ストーリーは、まあ。
なんか、モヤった。
この手の感動話は素直に泣くタイプなのに、あまり刺さらない。どうも僕は、この物語の主人公は誰なのか分かっていないようだ。
「信じぬくんだ、ひとりになっても」というのがストーリーに通底するキーワードなんだろうけど、主人公の少年ルビッチは何を信じたんだろう。
父の言葉は信じたろうけど、プペルのことは信じなかったよね。
もう一人の主人公であるプペルも、何かを信じて行動したわけじゃない。あったのは、親切にしてくれたルビッチへの報恩であり、何かを信じて固い決意の元で行動し続けたたようには見えない。
空には星があるという説も、仮に嘘だったところで、ルビッチは説を元に努力してるわけじゃないから、人生に影響を与えない。
ひとりになっても信じぬけという父の思いは息子に伝わっておらず、だからこそルビッチはプペルを裏切った。
むしろ「信じぬくんだ、ひとりになっても」とは、プペルの形を取ってでも実現したかった“ルビッチの父の執念”なんだよね。
しかもその執念は、息子に星を見せたことで成就されたわけで、物語の主人公は“ルビッチの父”になってしまった。
絵本とは、子供の情操に影響を与える。大人は子供にプペルを与え、誰のようになってほしいと願うのだろう。
何を主題とし、誰を主人公にして主題を伝えるか。そこを確定せぬまま感動風の話で煙に巻いてる。まるでえんとつ町のような、見通しの悪さを感じてしまったのだ。