サミー「パチンコ あの花」の評価
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
一年近く前にリリースされた機械ですけど、昨日Amazonプライムビデオでアニメ版を見まして。いいな!やっぱいいな! めんま可愛いしゆきあつ変態だし!
何が驚いたって、放映からもう9年経ってるのね。震災の直後に放送を開始して、その社会的な時勢も相まって心に深く刻み込まれたのかな。自分は後追いで見たのだけれど、なんか異様なほど感動したのを覚えています。こんな幸せな子供時代じゃなかったのに、心の原風景として何かが刺さった。
だからパチンコ化には反対だった。
原作アニメは好きだけどパチンコは稼働しないと思った。
パチスロと同時発売ということもあり設置店をかなり伸ばしたものの、その予想は残念ながら当ってしまいました。
試打中に泣いた(45歳)(独身)
作品は本当に大好きで。
ショールームで試打しながら半分泣いたし。
変な妄想しながらハンドル握ったし。
すごい。死後のめんまから見た光景なのかこれ。めんまはずっと、じんたん達をこうやって見ていたのか! すれ違い、遠ざかり、どうにも修復できなくなる超平和バスターズの、かつて親友だった仲間達をあの世の側から見ていた。苦しみ、悲しみ、だけど見つめることしかできず、めんまは遂に「向こう側へ」
やべぇ、泣ける
こんなキモい妄想をオタク特有の早口で語ってしまうくらい感動しました。
他にも、大当りするとき一瞬だけ満面の笑みのめんまが映るんですよ。ボタンプッシュから役モノ落下までの刹那、ほんの一瞬だけ。それが彼女の「儚さ」そのものでさ。原作を愛した人が作ったのかなと感じました。
めんま「押して!」
はかない・・・・・・この一瞬の笑顔が儚い・・・・・・。
そんなあのはな新台レポート。
直前に発行した藤商事のリングよりも1点だけ、
低くなりました(はかない)
なぜパチンコ版あのはなは稼働しないと判断したか
稼動しないと判断した原因は大きく分けて二つあります。
一つは「どうなれば大当りか分からない」
もう一つは「文字解説の多さ」
どうなれば大当りか分からない
数字が揃えば大当り! 現代のパチンコをその一言で説明するのは困難を極めます。液晶画面に展開される動画はむしろ数字以外をメインに据えており、リーチ中は画面の隅っこに追いやられます。
現代パチンコにおける「どうなれば大当りか」は割と大きな問題で。
- 敵を倒せば大当り(北斗・牙狼・必殺仕事人等ほとんど)
- 願いを成就すれば大当り(冬ソナ・カイジ等)
- 歌い上げれば大当り(かつての中森明菜)
- その他(海物語)
あまりにも複雑になり過ぎちゃってるもんだからほぼ全て「敵を倒せば大当り」になってる。このパターンで最も重要なのは当然「誰が味方で誰が敵か」をハッキリさせること。キャラを増やしすぎたり敵にストーリーを持たせると人気シリーズでも失敗しがちです。高尾の萌え系はまさにそれ。
この作品に「敵」はいない
あの花の問題点は、めんまは生者なのか死者なのかという「ゆらぎ」にある。13話あるアニメ版ならば説明も可能ですけど2分のリーチじゃ無理だ。サミーはそこを正面突破すべく通常時から文字による解説を試みているものの、後述する理由により成功したとは言いがたい。となるとこの作品の敵は誰なのかという話になります。
敵の不在によりパチンコの演出はぼやける。もしも「再結成した超平和バスターズ。敵は神。生き返っためんまを守れ!」という形ならばアニメを知らない人ほど違和感なく打てたでしょう。でもそんなの版元は許しませんよ。
版元との折り合いを付けられるか
版権モノはアニメ版がヒットすればするほど、制作者の思いがこもっていればこもっているほど、パチンコで演出上の融通を付けにくくなります。聖闘士星矢のすっぽんぽん入浴リーチなんて車田正美は許さないだろうし、負けまくる前田慶次なんて原哲夫は許さないでしょう。
原作者に権利がなかったとしても今度はアニメ制作会社で蹴られるケースも多い。涼宮ハルヒでキョン×長門の結婚エンディングなんて京都アニメーションは許さないはず。
だから最近は川上から押さえようと最初から出資して制作委員会へ入ったりするものの、プロデューサーやディレクターが作品のファンだったりするとマニア視点ゆえにパチンコへ寄せきれなかったりする。
こんな言い方は良くないけれど、版権に従って作ってあれば仮に売れなかったとしても稼働しなかったとしても「原作に忠実に作った」というエクスキューズを展開できる。
つまり版権モノのパチンコは原作通りを目指す強いベクトルに晒されるのですね。
文字解説の多さ
アニメの良さをどうにかして搭載しようとしているのは伝わりました。作品を大切にしようという意思も伝わった。ただ上述のように文字で解説しようとし過ぎている。声や文字で魅力を伝えようとするのはとても失敗しやすい。声はホールじゃ聞こえないし文字はいちいち真面目に読みませんから。
パチンコを打つ客層って文章を読むのが不得意だったりするからね。例えば「決定ボタンで決定してください」という文字は読めるんだけどその文章が何を意味するのかを理解できない。そして開発者は大卒だからその感覚を分からないという地獄絵図です。
日本人の1/3は文章を理解できない
国際調査で日本人の悲惨な読解力が明らかになりました。なんと1/3は日本語を理解できない。
日本人って文字は読めるから識字率だけ高くなる。でも書いてあることを理解できない。ブログでもSNSでも行間を全く読めない人っているでしょ。スマホアプリのレビューを見ても「コイツ本当に日本人か??」と感じるほど制作者に怒り狂ってたりする。
正しい文章と理解しやすい文章は異なる
文章を理解できないから必然的に読む速度は遅くなるし小学校低学年レベルの漢字で引っかかる。映画の字幕スーパーですら早すぎて付いていけない人も多いのよ。
↑「不慮の事故」を「ふりょのじこ」と読めて、意味を一瞬で理解できる人はどれくらいいるのか。 サミーはそこへ一切配慮してないよね。
正しい文章 → 幼い頃に不慮の事故で亡くなった少女
理解しやすい文章 → 子供のころ事故で死んだ女の子
しかも困ったことにこの画面、めんまは文字とは異なるセリフを言ってるんですよ。文字+声で同じなら理解できる可能性はありますけど、異なってしまったらもう無理。 さらに亡くなった少女なのになんで生きてるの? というところで思考は完全停止です。
あの花の文字解説垂れ流しはキツイ。
原作の世界観を正確にトレースしようとするあまり文字で説明してしまったのは残念の一言です。
パチンコあの花は失敗だったのか
その一方、あの花は失敗だったのかと問われれば「No」と答えます。私の知る限りバラエティや低玉へ移した後はそれなりに動いてる。一般人にとっては理解不能な演出でも原作ファンには刺さります。特に甘デジは濃いめの演出を数多く見られますからオススメできる。また、ミドルであってもP機なので年末までの入替対策になります。
ゆえに勧める。
あえて今こそ、サミー、あの花。
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。